大阪地方裁判所 昭和44年(ワ)2860号 判決 1969年12月16日
主文
一、被告が、訴外張鉉相に対する大阪法務局所属公証人岡崎隆作成昭和四一年第一、三八三号公正証書の執行力ある正本に基づき、当裁判所昭和四四年(ヌ)第一二一号の昭和四四年四月一六日付不動産強制競売開始決定により別紙目録記載の物件についてなした強制執行は、これを許さない。
二、訴訟費用は被告の負担とする。
三、本件について、当裁判所が昭和四四年六月五日になした強制執行停止決定は、これを認可する。
四、前項に限り、仮に執行することができる。
事実
第一、当事者双方の求める裁判
一、原告
「主文一、二項と同旨」の判決
二、被告
「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする」との判決
第二、請求原因
一、被告は、主文掲記の強制執行をなし、昭和四四年五月八日別紙目録記載の物件につき訴外張鉉相名義の所有権保存登記が職権でなされた上、強制競売申立の登記がなされた。
二、しかしながら、右物件は原告の所有物件である。すなわち、原告と訴外張鉉相は昭和一六年結婚したが、右訴外人は怠惰で労働をせず、何らの収入、資産も無く、原告が廃品回収業をして収入を得、一家の生計を支えてきた。右訴外人が右のとおりの人間であるため、原告と右訴外人とは昭和四二年五月頃から別居するに至り、右訴外人は西成の方に住み事実上離婚し、昭和四四年二月一七日正式に離婚手続をした。原告は昭和三一年頃右物件所在地上に倉庫、店舗兼居宅および寄宿舎の三戸の建物を自己の負担で建築していたが昭和四二年九月頃右三戸のうち倉庫を取り壊して倉庫を新築し、また右店舗兼居宅の壁、柱、床等に大改造を加えて新築同様のものとした結果、別紙目録記載の建物となつた。
三、右の次第で、原告所有の物件についてなした強制執行は失当であるので本請求に及んだ。
第三、被告の答弁
請求原因事実中、一項の事実は認めるが、二項の事実は否認する。別紙目録記載の物件は原告の夫である訴外張鉉相が建築所有していたもので、固定資産税等も同人に課税されてきたものである。
第四、証拠(省略)
別紙
物件目録
大阪市西区阿波座上通四丁目一三番地
一、倉庫 鉄筋コンクリートブロツク及木造瓦葺二階建床面積一階四五、九五平方メートル、二階四五、九五平方メートル
附属建物
一、店舗兼居宅 木造瓦葺二階建床面積一階三七・一七平方メートル、二階三七・一七平方メートル
一、寄宿舎 木造セメント瓦葺二階建床面積一階三八・四〇平方メートル、二階三八・四〇平方メートル